私がシェーピングマシンを持っていれば話は別なのですが、外注のマシン(コンピューター)シェープを使っている以上、加工されたフォームが届くまでに長い時間掛かってしまうということは致し方なく、サーフボードの受注から完成までに想定以上の長い期間を要してお客様に大変ご迷惑をお掛けしているのが現状です。
そして、これまでに百万円前後のマスターデータの制作費用とフォームの加工賃というコストをかけてまで使用するのには大きな理由があります。
大量に製造するファクトリーであれば本数をこなすことで1本あたりのコストを下げることができますが、残念ながら私のようなアンダーグラウンドシェーパーにそれは無理というもの。
それでも精密で高品質なサーフボードを安定的に製造してお客様に使ってもらうという点において、マシンシェープを使うメリットはとても大きいのです。
また、マシンシェープを使うことによって細部まで丁寧に時間をかけられるなどいろいろな利点があるのですが、今回は客観的な視点から考察した私なりの説明をしようと思います。
< 浮力 >
浮力は体積です。
コンピューターの場合、浮力は L(リッター)で表記され、コンピューター上でデジタルに計算された正確な数値で浮力を示すことができます。
ハンドシェープの場合、サーフボードの長さ、幅、厚さの3つの数値をこれまでの経験から導き出された不確実なもので曖昧です。
そして、私がコンピューターを使うようになって知ったことは、サーフボードの長さの違いでは浮力に大きな影響を与えることはなく、逆に幅はこれまで思っていた以上に影響を受けるということ。
要するに、長さ、幅が同じでもアウトラインの形状(表面積)によって大きく違うということも知りました。
< アウトライン >
サーフボードのフォーム(ブランクス)のストリンガーは必ずしも真っ直ぐとは限りません。
もちろん個体差があるのですが、湾曲していたり、捩れが入っていたりするのです。
なので、必ずサーフボードの中央に真っ直ぐ入っているとは限らないのです。
コンピューターの場合は、ストリンガーのノーズとテールにポイントを決めるとストリンガーが曲がっていようと関係なく架空のストリンガーを想定して左右対称になるように加工を始めます。
ストリンガーがサーフボードの中央になくともアウトラインは左右対称に出来上がるのです。
ハンドシェープの場合ではストリンガーが真っ直ぐであるということを前提にしているので、ストリンガーを中心にテンプレートを当ててアウトラインを引いて行きます。
ノーズから1フィート、テールから1フィートの位置の幅を設定した場合、ストリンガーが湾曲している際にはテンプレートのアウトラインがそのポイントの上に来ないという混乱が発生することになるのです。
これが現実で、これはけっして良いことではありません。
< ロッカー >
ワンメイクで作るカスタムボードであれば問題はありませんが、多くのサーフボードには◯◯◯モデルといった名前がついています。
コンピューターの場合は、フォームの中に作りたいサーフボードのフォルムが入ればどんなフォームでも良く、サーフボードの長さが大きく変わってもコンピューターが拡大縮小を自動的に行ってくれます。
ハンドシェープの場合は、例えば標準的に使っているフォームの範囲内のサイズのサーフボードであれば問題はないのですが、そのフォームでは入りきらない長いサーフボードの場合はそれに合った長さのフォームを使わなければなりません。
その場合、使用しているフォームの長いバージョンのフォームがリリースされていれば良いのですが、なかなかそう多くはリリースされていません。
そうなると違ったロッカーのフォームでシェーピングをする以外にはないので、本来のロッカーとは違うロッカーになってしまうのです。
アウトラインのテンプレートは同じですが、ロッカーが異なっているというのはそれでも同じモデルと呼んで良いものか?どうか?
私自身、コンピューターを使い始めた際に突きつけられた疑問でした。
また、私はハンドでは不可能なミリ単位の微細なノーズロッカーの改良をコンピューター上で行い、完全なオリジナルロッカーを生成しています。
コンピューターだからこそ出来たことなのです。
< マシンシェープとハンドシェープのコラボレーション >
私のマスターデータは、ベースとなる基本的な骨格が主になっていてカスタマイズしやすいように手を加える余地を待たせたデータになっています。
それは新しいアイデアを加えてアップデートを施そうとするときのための余地であったり、お客様のオーダーに合わせたカスタマイズを行う際に手を加えて削ることができる余地がないと物理的に不可能になるからです。
そして、シェーピングは生き物、最新バージョンにアップグレードされて進化したサーフボードを常にお客様にご提供させて頂いております。
< Precision (精密) >
けっして安価な買い物ではございませんし、最高に調子の良いサーフボードをお客様に乗って頂くということは、お客様にとっての最大の利益であり、もっともお客様が求めていることだと思っています。
そのための方法としてのマシン(コンピューター)シェープは、最初に述べたように精密でハイクウォリティーなサーフボードを作るためのベストツールとの考えから使用しています。
< お客様へ >
このようなシェーピングスタイルへの共感からサーフボードの購入を考えて下さっているお客様がいらっしゃいましたら、最初に書いたように時間が掛かることをご理解の上にてオーダーをお願い申し上げます。
至高のマジックボードを皆様にお届け出来るよう溢れるマナを込めたフルスキルでシェーピングさせて頂きます。